平成19年度漁期は、九州有明海で高水温対策として大幅に作業開始を遅らせるなど、慎重な構えが奏功し、また栄養塩量の極端な低下もなく高品質の製品が生産され、過去最高水準の数量、金額を記録した。その一方、瀬戸内地区は、秋芽網の生産期の当初から広範囲で栄養塩が不足していた。それでも秋芽網の劣勢を挽回して余りある生産能力に期待が寄せられていた。しかしながら降水量の不足が顕著で、栄養塩レベルもほぼ全般的に低水準であった。さらに外国船籍の貨物船沈没事故による油濁被害が追い打ちをかけ、生産盛期を迎えぬまま網上げをせざるを得ない苦境に立たされた地区もあった。そうした結果、九州有明海と瀬戸内の生産量と金額において、地域間格差が大きくなった。全国集計では、総共販枚数が約86億2,800万枚、金額が約768億円、平均単価は8円90銭。昨年8円台に低迷した単価は、今年も頭打ち気味と言わざるを得ない。
外国産ノリの輸入については、社団法人のり協会が開催した入札会、商談会での成約率は低調に終わった。輸出入メリットをお互いの商社がいかにとらえているかをはかる指標ではあったが、日本側韓国側ともに冷静な印象のまま終始した。中国ノリについては、昨年に続いて中国側の事情により、開催は見送られた。食品、特に加工食品業界を賑わすこととなってしまった中国製冷凍食品の事件は、国際的政治問題にまで発展しかねない様相を示した。食の安心、安全を問う我が国国民の目は一層厳しいものとなっている。
いっぽうノリ業界においては、品種株等の知的財産について取り組みが進んだ年度ともいえる。全海苔連が事業主体となって取り組んでいる水産庁補助事業の「優良品種確保促進事業」は第2年度を終え、より優良な品種の確保と具体的な登録までのプロセスの精査に余念がない。後継者のため、そして業界全体の未来のために関係者の努力は続けられている。
また、昨今の食品業界への消費者の信頼を吹き飛ばす事件が続発した。賞味期限や原料原産地の表示問題が連日報道された。消費者からの信用を取り戻すべく、業界各社はまい進を始めた。全海苔連は、農林水産省当局から担当官を招き、入札指定商を対象として海苔製品にかかわる表示関連の説明会を実施。ノリ業界にとって、業者間取引にまで拡大した内容表示を行なう事は、避けて通れない商品管理の重要部分となった。
この小冊子は本会データベースはもとより、農林水産省、水産庁、並びに全漁連、全国のり事業推進協議会等からの情報、資料提供などの協力を得て、まさに「ノリ業界の現況」を生産、流通、消費に関わるデータ(資料)によってわかりやすく紹介したもの。ノリ業界における「白書」として、各位にご活用を賜れば幸いである。
全国海苔貝類漁業協同組合連合会 漁政総務部
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